SFと狂言を掛け合わせた伝統の再解釈
大阪・関西万博の公式協力催事としてEXPOホール「シャインハット」にておこなわれた「SF狂言“Mono no Aware”」。原作は、史上初めて世界3大SF文学賞(ヒューゴー賞、ネビュラ賞、世界幻想文学大賞)を獲得したアメリカのSF小説家ケン・リュウの短編SF「もののあはれ」。人間国宝の祖父の名跡を継ぐ十世三宅藤九郎が演じる。本作品はアート・芸能・ファッション・デザイン・音楽・ゲームの分野を横断し、伝統から新しい表現を生み出すことに挑んだ。Konelは会場内のプロジェクションによるリアルタイム映像演出を担当した。

Concept
世界的SF作家ケン・リュウの原作を、日本最古の伝統芸能である狂言へと翻案した作品であり、狂言がもつ普遍的な感情表現の力を現代の知識とテクノロジーによって拡張し、国境・文化・時代を超えて響き合う21世紀の新たな芸能の形を提示する試みである。神への信仰として始まり、生と死の不条理を笑いへと昇華してきた狂言の精神を通して、神なき時代における信仰とは何か、そして新しい技術がもたらす世界といかに向き合うべきかを問いかける。
演者と観客のあいまいな関係
映像演出において、演者と観客の関係を再構築することをテーマに、両者の境界をあいまいにする表現を試みた。観客を作品内に登場する宇宙船の“乗客”として位置づけ、リアルタイムで撮影された姿を演出に組み込み投影することで、観ることと演じることの垣根を溶かしている。左に並ぶ文字列は「名前」を象徴しており、性別・国籍・年齢といった区別を超え、すべての人を等しく“存在”として描き出している。



有機的な宇宙、内なる精神
宇宙という外的な広がりと、人間の内的な精神世界を重ね合わせたメタファーとして構築されており、観る者の意識が作品とともに揺らぎ、自己と他者、現実と虚構の境界が溶け合う感覚をもたらす。宇宙の網目構造の形成をリアルタイムで表現するためのプログラムを用い、生命的で有機的な動きを再現することで宇宙と精神のあいだに存在する見えないつながりを可視化している。



