新たな出逢いを創出するAIプラットフォーム

Issue
「やりたいこと」を「できる」に変えるをビジョンに掲げるさくらインターネット株式会社はオープンイノベーションのため施設であるBlooming Campを開設。オンラインとBlooming Campを拠点に、多様な人々が交わる「場」と「機会」を提供し、イノベーションの源となる出逢いの創出に着目している。しかし、現代のレコメンドシステムやアルゴリズムは、私たちの世界を便利にする一方で、ユーザーの興味や嗜好を均質化し、属するコミュニティに偏りを生じさせる傾向がある。その結果、エコーチェンバーやフィルターバブルといった問題に代表されるように、情報閉塞が起こり、思考や関係の幅が狭くなっていくリスクが高まっている。本プロジェクトでは出会いのきっかけとアイデア創出を実現するための実証実験として立ち上がった。
Creation
本プロジェクトではセレンディピティ(偶発的な出逢い)に注目し、その価値を再構築する試みから始まった。マッチングサービスのように、メタ情報のみでロジカルに導き出される出逢いは感動に欠けている。心を動かす出逢いとは何か、本プロジェクトでは人と人の相性を示す「周波数」に焦点を当てた。
リサーチの中で、私たちは筑波大学 情報システム系 川崎 真弘准教授による「コミュニケーション時の行動リズムのシンクロ率から2者間の相性を定量化する技術」に着目。本研究ではまさに行動のリズムを周波数化し、シンクロ率を算出していた。行動リズムの同期は、偶発性の中にある意味を捉えるヒントとなった。
一方で、さくらインターネット株式会社が掲げるように、「やりたいこと」による意志の方向性と、「できること」によるスキルの補完性も、共創の出発点として重要である。言語化された意思とスキルの一致や補完関係は、ベクトル空間における距離としてAIが得意とする分野でもある。
本プロジェクトでは、「押し付けられる出逢い」を否定する意味でも「相性の良い人」をレコメンドするのではなく、シンクロ率が高い人、やりたいことが近い人、あるいはその両極に位置する人など、特徴的なポジションにいる人物をグラフにマッピングし、誰と出逢いたいかは、あくまでユーザー自身の判断に委ねる体験設計とした。また、その人物と自分が交わることで「どんなプロジェクトが生まれるか」のアイデアを、LLMに発想させることで、出逢いの可能性を具体的な創造へとつなげている。
Blooming Campに参画する多様なコミュニティメンバーを示すためにも、バリエーション豊かなキャラクター「Buddies」をデザイン。これらのキャラクターは、輪郭、表情、配色などの組み合わせによって構成され、1000通りのデザインによって視覚的にも多様性を表現。
さらに、実際のコミュニティスペースにおいてもBuddiesの世界観を体感できるよう、装置型筐体を開発。ユーザーはその場で自身のニックネームとBuddiesを反映したオリジナルステッカーを作成することができ、イベント時などリアルな場では名刺代わりのコミュニケーションツールとして活用することが可能となっている。また、空間と偶発性の演出として、1/1000の確率で自身のキャラクターの一致するBuddiesをのぬいぐるみも制作。オンライン・オフラインを横断して、出逢いのきっかけを生み出していく。

Technology
本プロジェクトでは、筑波大学の学術指導を受け、その研究成果をウェブアプリケーションとしてクラウド上に実装している。セキュリティを配慮し、AIモデルは外部サービスを用いず、さくらインターネットのGPUクラウドにオープンソースモデルを配置し、それらを活用して、ユーザーの個性を象徴するニックネームを自動生成する。ユーザーの「Want(やりたいこと)」と「How(得意なこと)」をベクトル化し、ベクトルデータベース上で距離を算定する仕組みを構築した。
周波数・Want・Howの3つを元に、認知脳科学と、テキスト解析AIによって、ユーザー同士の関係性を分析し、新たな共創を生み出せそうな人たちを提案。ユーザー同士が実際に出会った際に生まれる共創アイデア「Serendipity Project」まで自動的に提案する仕組みを備えている。
Future
Buddiesは、ユーザー同士の出逢いを起点としながら、共創のハブとなることを目指すプラットフォームである。ユーザー1人につき、8人の共創相手候補が提案され、それぞれとの関係性に応じた共創アイデアが生成される設計となっている。この構造により、仮に1万人のユーザーが本プラットフォームを利用した場合、最大で8万件の共創プロジェクトの種が生まれることになる。
それぞれの出逢いが1つのプロジェクトとして芽吹き、社会に大きな影響を与えるような価値を生み出す可能性を秘めている。


Project Information
Project Owner
SAKURA internet, Inc.
Team
Technical Director | |
Planner | |
Designer | |
Creative Engineer | |
DevOps / Backend Engineer | |
Frontend Engineer | |
Project Designer | |
Photographer | |
Plush Toy Designer | Ito Kasumi(Konel) |
Machine Creation | Spline Design Hub |