土着と食を扱うニューメディア
田舎のイメージを再構築する
石川県白山麓・木滑(きなめり)。その里山を舞台に多角的な事業を営む山立会が育てる巨大なめこ〈でけえなめこ〉を軸に、ジビエや山菜など土着の食文化を扱うニューメディア「木滑土着食媒」を制作。ネーミング、タブロイド、手ぬぐい、都市部ファーマーズマーケットへの出店までを一つの物語として連動させ、田舎のイメージを再構築する“ヴァナキュラティブスタイル”を提示。土着の産品を触媒に、木滑から世界を盛り上げていく流れを目指す。



Issue
広域なブランディングにより薄まる地域性
県やエリアを一括りにしたブランディングは、幅広いターゲットに合わせて地域の特徴を抜き出し、伝えやすい形に整える点では有効だ。しかし枠組みを広げるほど、その風土に根差す営み、そのかすかな手触りがこぼれ落ち、集落ごとの輪郭は曖昧になっていく。画一化されたイメージの下では、里山を舞台にした山立会の挑戦も、巨大なめこ誕生の物語も、暮らしのリアリティも届きにくい。そこを課題として捉え、私たちは木滑という集落の最小単位にフォーカスし、土着性から世界を盛り上げる方法を探った。
Creation
土着性を感覚的に伝える
木滑土着食媒のロゴは、山の裾野に寄り添う集落の輪郭と、そこに息づく地域の看板表現を重ね合わせてデザイン。タブロイドでは写真家とともに集落を一周し、ありのままの風景と営みを撮影し、それらを地形と位置に結びつけて木滑の空気を直感で掴める表紙へと落とし込んだ。QRコードからは、なめこや集落の環境音を編んだ楽曲を再生可能とし、裏面には山立会に人と共に書いた脚色のない文字情報を配置。視覚と聴覚をはじめ五感で木滑を味わうメディアに仕上げている。タブロイドはそのまま地域産品の包み紙としても使える。さらに都市部のイベントへ出店し、外の視点でどう映るかを検証するところまで、企画・制作・評価を伴走している。







Technology
集落を耳でも味わう
集落を五感で味わうため、聴覚にも踏み込む。石川県出身のDJ/コンポーザー・PPTVとともに、車が通り抜ける音、水が流れる音、生産工場の機械音をフィールドレコーディング。さらに、なめこから発せられる信号をMIDI変換するデバイスを使い、シンセサイザーで可聴化。これらをコラージュして楽曲に仕立て、タブロイドのQRコードから試聴できるようにしている。

Future
土着性から広げる
木滑土着食媒は、地域の土着性と食から世界を盛り上げることをめざす。その核心にあるのは、集落に根ざした営みと外部の視点を交差させる共創だ。この仕組みを他の集落にも展開し、連鎖的に熱を広げたい。木滑の食を取り入れたい企業、地域や集落をヴァナキュラティブスタイルでデザインしたい企業は、ぜひ気軽に声をかけてほしい。
